「図書館情報資源特論」のレポートの解答例です。
レポート作成の参考にご覧ください(読みやすいよう改行を少し加えています)。
2023年4月入学です。
ここに掲載のレポートを写してご自身のレポートとして提出することは、大学の教育方針に反しますのでご遠慮ください。類似レポートは再提出となるのでご留意ください。あくまでも参考としてご覧ください。
「図書館情報資源特論」設題
灰色文献とはなにか、灰色文献の定義や意義、特性について記述してください。
また、灰色文献と言われる具体的な資料名を挙げて、その資料の特徴について
も説明してください。
「図書館情報資源特論」解答例
灰色文献とはなにか、灰色文献の定義や意義、特性について述べる。
次に、灰色文献と言われる具体的な資料名と、その資料の特徴について説明する。
1.灰色文献の定義、意義、特性
(1)灰色文献の定義
灰色文献の定義については、灰色文献ネットワークサービス(Grey Literature Network Service:GreyNet)が主催する灰色文献国際会議の場で何度か議論が行われている。1997年に国際的なレベルで初めて灰色文献が定義付けされた。その定義は「紙や電子フォーマットで、政府、大学、ビジネス、産業のあらゆるレベルにおいて生み出されるもので、商業出版社によってコントロールされない」というもので、ルクセンブルク定義と呼ばれている。その7年後、「主たる活動が出版を本業としない組織によってコントロールされている」という一文が新たに加わり、ニューヨーク・ルクセンブルク定義と呼ばれている。
その後も、情報化社会や電子化など、技術革新の変化に伴い多種多様となった灰色文献の定義付けが検討され続けている。しかしながら、池田(2015 ※1)が「インターネット上の情報までも視野に入れ、定義の中で『あらゆる情報』を対象としたことが、灰色文献の範囲が拡大し、よりあいまいなものとなってしまった要因ではないだろうか。」と述べているとおり、情報化社会や電子化などの技術革新が急速に進む昨今、より実態に則した定義付けが難しいというのが現状であるといえる。
(2)灰色文献の意義
市民社会の政策決定、学術研究、ビジネス、産業などの発展において、重要かつ貴重な情報源である。例えば、井上真琴は「図書館に訊け!」(ちくま新書、2004 p56-57)の中で、重要企業の社史の例として、ワコールの社史「ワコール50年史」(ワコール社長室社史編纂事務局編 1999)を挙げ、「日本の洋装下着の歩みにとどまらず、下着文化・身体文化を包括する堂々たる内容となっている」と述べている。また、村橋勝子は『社史の研究』(ダイヤモンド社 2002)の中で、「社史は経営史の資料として位置づけられるだけでなく、産業史・経済史・技術史・業界史としても貴重」とし、「『花王史100年(1890-1990年)』、『創ってきたもの伝えてゆくもの-資生堂文化の120年』などは、文化史や風俗史の研究書に勝る情報を提供する情報源となる。」と述べている。このように、灰色文献には大変重要な意義がある。
(3)灰色文献の特性
まず、資料を収集する際、灰色文献という文献が存在することを知る必要がある。市販され誰でも入手可能な一般の資料を「白」、政治上・軍事上の機密事項が記入されているためごく少数の特定者以外は非公開とする機密文書を「黒」とすれば、灰色文献の「灰色」とはその中間に位置するという意味合いになる。
一般的な商業出版、学術出版の流通経路からは入手困難で、限られた対象者、限られた部数で配布されるという特性をもつ。また、「網羅的な情報源リストが存在しないので、いつ、どこで、誰によって、何の目的のために、どんな内容のものが作られているのか把握しにくいという全般的な特徴がある。」(林聖子 灰色文献 Grey Literature 薬学図書館43(3),277-283 1998)
2.灰色文献の具体的な資料名とその資料の特徴
(1)政府刊行物
官報、白書、年次報告書、法令資料、各種統計などの情報・資料をいう。これらは、中央政府等が公表する行政・司法・立法に関する公的な情報・資料である。公的な情報源として比較的信頼性が高いことが特徴である。
(2)地方自治体が作成した資料
文化財調査報告書、市町村史などをいう。政府刊行物と同様、公的な情報源として比較的信頼性が高いことが特徴である。
(3)プロジェクトレポート、調査報告資料
民間のシンクタンク、調査研究機関などが発行している資料で、特定のテーマについてのデータや動向などを分析し、まとめたレポート、調査報告である。
(4)学位論文(Dissertation)
学位論文とは、学位(博士号)を取得するために書かれた論文で、一部は審査大学に、もう一部は国立国会図書館に送られることになっている。資料的価値が高いのが特徴である。現在は、国立情報学研究所NII(https://www.nii.ac.jp/service/)の学術コンテンツ提供サービスで検索が可能で
ある。
(5)会議録(proceedings)
学会などの会議での発表論文とディスカッションを中心にその会議の正式な記録をまとめたものである。
このように灰色文献には様々な種類がある。これらは、インターネットの普及などにより、入手しやすくなっている反面、永続的に入手、保存がされるのかなどの問題もある。こうした灰色文献をとりまく状況の変化にアンテナを張りつつ図書館員は業務を行うことが大切である。
(2026文字)
「図書館情報資源特論」参考文献
1 池田貴儀「インターネット時代の灰色文献 灰色文献の定義の変容とピサ宣言を中心に」(情報管理 2015 vol.58 no.3 p193-203)
2 井上真琴「図書館に訊け!」(ちくま新書 2004 p56-57)
3 ワコール社長室社史編纂事務局編「ワコール50年史」(1999)
4 村橋勝子「社史の研究」(ダイヤモンド社 2002)
5 林聖子「灰色文献 Grey Literature」薬学図書館 43(3) 277-283 1998
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpla1956/43/3/43_3_277/_pdf
6 国立情報学研究所NII学術コンテンツ提供サービス
https://www.nii.ac.jp/service/)
7 山本順一/編集「情報の特性と利用-図書館情報資源概論」(創成社 2012.4.20)
「図書館情報資源特論」講評
灰色文献の定義や特徴について記述できています。
近年の灰色文献は、一部ウェブで公開されているものもあります。
どのようなデータベースで閲覧できるのか調べて具体的に記述するとさらに良くなったでしょう。
「図書館情報資源特論」レポート作成談
「図書館情報資源特論」のレポート作成談です。