「図書館制度・経営論」のレポートの解答例です。
レポート作成の参考にご覧ください(読みやすいよう改行を少し加えています)。
2023年4月入学です。
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「図書館制度・経営論」設題
「図書館経営の基本思考」における「未来思考」の5点について簡潔明瞭に説明した後、その「未来思考」を受けて、今後の専門職としての司書のあるべき姿を論じるとともに、それに伴う図書館運営のあり方を、貴方自身の考え方を含め論じて下さい。
「図書館制度・経営論」解答例
1.はじめに
「図書館経営の基本思考」における「未来思考」の5点について簡潔明瞭に説明する。その「未来思考」を受けて、今後の専門職としての司書のあるべき姿と、それに伴う図書館運営の在り方を述べる。
2.「図書館経営の基本思考」における「未来思考」について
健全に図書館経営を継続していくためには、将来を見据え、未来思考で図書館政策を行う必要がある。将来を見据えるためには、日頃から有用な情報を収集することが極めて重要である。有用な情報には大きく分類して、以下の5つが挙げられる。
(1)文教政策情報
文教政策情報とは、国や地方自治体等の教育行政に関する情報である。教育行政に関する新しい情報や変更情報については制定される前に新聞・ニュース等で流れるため、その情報を十分収集して動きを把握する必要がある。
(2)社会変化情報
図書館学の五法則の一つである「図書館は成長する有機体である」という言葉にあるように、図書館は社会変化(情報環境の変化、高齢化社会、高度学歴化社会、少子化社会など)にアンテナを張り、必要に応じて柔軟、迅速に対応、適応していくことが重要である。
(3)図書館界の変化情報
図書館は、母体となる親機関である縦軸と、図書館界である横軸のネットワークの中で運営されている。そのため、図書館経営は親機関の方針に大きな影響を受ける。また、図書館界の決議事項や申し合わせ事項は、図書館活動に不可欠であり、十分考慮する必要がある。
(4)出版界・情報産業界の変化情報
近年は、紙資料に電子資料(電子書籍、データベース等)が加わるなど、資料形態に大きな変化が生じている。こうした出版形態の変化は、図書館政策に大きく影響するのでその動きを常に把握する必要がある。また、図書館は「知る権利」を保障する唯一の公的機関として、情報産業界の動向を注視する必要がある。
(5)マーケティング変化情報
図書館経営にあたっては、将来的に図書館が健全に発展していくために、利用者中心思考に基づき、利用者のニーズを把握するための市場調査、分析を行い、マーケティング変化を的確に把握する必要がある。
3.今後の専門職としての司書のあるべき姿と図書館運営のあり方
専門職とは「専門知識を提供して報酬を得る仕事」をいう。専門職としての司書は、未来思考の観点から、これまで述べてきた多様な変化情報を積極的に収集し、自己啓発を図りながら知識を深め、専門的業務であるレファレンス業務、選定・除籍業務、分類・目録業務、情報調査業務、文献探索指導業務等に活かしていくことが本来あるべき姿であると考える。
知識を深めるためには、司書個人の自己啓発のみならず、図書館運営側が提供する集合研修、OJTなどの研修を通じて課題形成、課題解決形成の方法を学び、変化への適応能力を養い、専門職としてのスキルを向上させる必要があると考える。図書館運営にあたって、利用者サービスの向上は極めて重要であり、そのためにも専門職の養成は、計画的な研修制度に基づき行われるべきである。また、適材適所の原則に則して、専門職機能は、高度な具体的サービスを実現させるために、図書館業務の要所に持たせることが重要である。
図書館における組織のあり方は、図書館運営を大きく左右する。現在図書館で見られる組織には、「働き」(職能)から部門化された職能別組織、資料の主題から分けた主題別組織、利用者から分けた利用者別組織、資料の形態別から分けた資料別組織、それらを混合した混合組織の5つがある。図書館運営にあたっては利用者中心思考を基本として、その図書館の規模や財政、人員を踏まえたうえで、最も効果的な組織を構築することが鍵となる。
しかしながら、現在の図書館の人員配置に際しての問題点として、司書資格を持った職員と行政職で人事異動により図書館に配属された職員、指定管理者団体の社員、派遣会社の社員、非常勤・臨時職員など、雇用関係が複雑化していることが挙げられる。柳与志夫(2019)は「雇用関係や労働条件が異なる職員を、図書館組織全体としてまとめていくことが、館長をはじめとする図書館管理者の大きな課題」と述べている(※1 P53)。図書館運営の際、人員配置が困難を極めることを理由に、専門的業務と非専門的業務を区分せず平等に業務を分担したり、ローテーションで業務を平坦化すると、図書館員の専門性を希薄にさせ、専門性を必要としないレベルの図書館活動になってしまうため、避けなければならない。その点については、山崎博樹(2021)が「住民は図書館に対して本の貸し出しをするためだけの施設という認識で固まってしまい、それ以上の期待は発生しない。」「そういう社会全体の認識を変えないと図書館の将来は暗い」(※2)と警鐘を鳴らしているとおりである。
現代において、図書館運営を健全に行うためには一筋縄ではいかないさまざまな困難が伴うが、利用者中心思考、未来思考を指針として、図書館政策を行うことが重要である。また、専門職としての司書もその点を肝に銘じて、日々研鑽を積む必要があると考える。
(2094文字)
「図書館制度・経営論」参考文献
※1 柳与志夫「図書館制度・経営論-第3版(ライブラリー図書館情報学4)」学文社 2024.4
※2 山崎博樹「図書館を語る 未来につなぐメッセージ」青弓社 2021.8
※3 文科省「図書館の設置及び運営上の望ましい基準(以下、望ましい基準)」テキスト「資料編」収載
「図書館制度・経営論」講評
良いレポートの一つになりました。論述内容、参考文献の活用も高く評価できます。
「図書館制度・経営論」レポート作成談
作成にとても苦労しましたが、再提出になったおかげで理解を深めることができたと思えたレポートでした。
沼にはまった「図書館制度・経営論」のレポート作成談の詳細もよろしければご覧ください。