【合格例】図書・図書館史[’23-’24]レポート 近大司書 2023年4月入学

「図書・図書館史」のレポートの解答例です。
レポート作成の参考にご覧ください(読みやすいよう改行を少し加えています)。
2023年4月入学です。

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目次

「図書・図書館史」設題

日本または西洋のどちらかを選び、それぞれの時代(古代、中世、近世、近代以降)の図書館発展の特徴をコンパクトに要約し、かつ私見(400字程度のまとめ)を述べてください。

「図書・図書館史」解答例

日本の図書館発展の特徴を、古代、中世、近世、近代以降の時代ごとに考察し、自身の考えを述べる。

1.古代
仏教興隆にともない、書写された貴重な仏典や文献を大切に収蔵する経蔵が各寺院に隣接して建てられた。その利用者は僧侶などの僧籍関係者に限られていた。
701年に大宝律令で定められた図書寮は、国史編纂や行政関係文書などを保管する重要な保管機関の一つであった。図書寮には図書の保管機能だけでなく、朝廷などで使用する用紙を製造する「紙屋院」もあった。当時の情報伝達媒体は紙や木簡で、紙は高価なため、写経用など大切な文書に使用された。
日本最古の公開図書館は、奈良時代末期に石上宅嗣が設けた芸亭と称する書斎であった。そこでは儒教の典籍を収蔵し、好学の人へ開放し、図書の閲覧のほか、儒仏一体の教育的施設として講義や討論も行われた。
平安時代には、貴族の間で邸内に文庫を設けるものがあらわれた。
このように、平安時代までの文化は貴族を中心とした仏教文化であり、図書館においても貴族文庫が興隆をみた。

2.中世
武家の文化が成立し、武家による文庫が日本各地に作られた。代表的なものとして、鎌倉時代の中ごろに北条実時によって設けられた金沢文庫が挙げられる。実時が学んだ政治、法制、軍事、文字などの書物が文庫の基礎をなし、その後、その子である顕時、孫の貞顕によって発展し、漢籍や国書など広い分野にわたり収集された。
その文庫の利用には規定があり、公開的な図書館ではなく、主に僧侶の利用に限定されていた。
もう一つ代表的な文庫が、上杉憲実によって建てられた現存する日本最古の学校「足利学校」の文庫である。武人から多くの図書が寄進され、儒学関係とりわけ易学の典籍が豊富であった。図書の利用については、貸出禁止、閲覧は1冊に限定、書き込み禁止、季節ごとに本の手入れをするなどの決めごとがあった。この時代は、中央の文化が地方に拡散し、学問や文化が民衆の間に広まり始めた時代でもあった。

3・近世
江戸幕府の学芸奨励も手伝い、文化は下層階級にまで伝播し、武士や町人など、国民文化、町民文化が栄えた。この時代の図書館は時代を反映して、幕府の文庫、武士・大名の文庫、町人や庶民の文庫、幕府直轄学校や藩校の文庫など、さまざまな文庫がつくられた。
徳川幕府の文庫として最初に設置された富士見亭文庫(のちの紅葉山文庫)は、日本最初の官立図書館である。この文庫は将軍が利用することを目的としており、一般公衆の利用は考慮されていない。大名が創設した文庫である佐伯文庫は、藩校の教授や学生を中心に一般の有志にも閲読の便宜を図る進歩的な文庫であった。幕府の直轄学校である昌平坂学問所は、当時における最高学府であり、その文庫は中央図書館的な機能を果たしていた。この時代は、庶民大衆が文学に親しみを持つようになり、読書施設などを利用する機運が生じ、江戸時代末期には庶民の読書機関としての図書館(文庫)が出現した。

4.近代以降
福沢諭吉の『西洋事情』によって欧米諸国の図書館の事情が紹介され、図書館の重要性を唱える人も増えた。明治7年に創設された官設の図書館「浅草文庫」(のちの「東京書籍館」)は今日の国立国会図書館の源流である。明治13年に東京図書館と称され、この時初めて書籍館を図書館と呼ぶようになった。当時の1日平均の来館人数は191人、求覧図書は1187冊であった。明治18年に教育博物館と合併し、明治30年に改称された帝国図書館は、蔵書24万冊をかかえた近代的な図書館であった。
大正時代に入ると、大正天皇の御大典記念事業として、多くの図書館が誕生した。そのほとんどが「簡易図書館」であった。
戦後、連合国総司令部(GHQ)による日本の教育民主化政策の一環として、自由に利用することができる開かれた図書館を目指すべきとの図書館の方向性が提言された。1963年に『中小都市における公共図書館の運営』(通称『中小レポート』)が発表されてからは、新しい図書館、家庭文庫、子ども文庫などが形成され、図書館史上、画期的な転換期を迎えた。1970年代ごろからのコンピュータの導入をきっかけに、現在まで、情報技術を生かしたよりよい図書館サービスへの模索がつづいている。

5.まとめ
仏教復興にともない、仏教に関する資料を収集、保管するために必要とされた文書庫、現在の図書館は、時代の要請や変化とともにその役割を大きく変えてきた。
また、当初、僧侶や貴族、朝廷や公家、武士など限られた身分の者が利用した図書館は、時代とともに町民そして市民へとその利用者の幅を広げた。
図書・図書館史は、書物や資料から知識や教養を得て、また図書館を通して喜びを得てきた人間の図書活動の歴史でもあると考える。私たちは、現代の私たちが持ちうる最大限の知恵と技術を生かして、その歴史を紡いでいけたらと考える。
(2007文字)

「図書・図書館史」参考文献

「現代図書館情報学シリーズ11 図書・図書館史」(樹村房・2012.4.25発行)佃 一可 編

「図書・図書館史」講評

提出お疲れ様です。
設題のポイントをしっかり押さえ、日本の図書館史を大変分かりやすくまとめられています。特に初期の図書館が限られた特権階級のためのものだったのに対し、現代の誰でも自由に使えるものに変化してきたことを理解している内容であり秀逸でした。欲を言うと製紙技術や印刷技術の向上により、図書の流通量が時代の下るにつれて増加し、市井の人まで読書ができるようになり、出版文化や貸本業が隆盛となることも踏まえて書いて欲しかったです。これが現在の誰でも使える図書館の前提になっています。以上を念頭に置き、もう一度テキストを読み返してみてください。製紙技術や印刷技術の向上が図書・図書館の発展史の骨格になっていることがよく分かってくると思います。私見は納得できる内容でした。
引き続き頑張ってください。

「図書・図書館史」レポート作成談

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